https://diamond.jp/articles/-/320359
●「たばこは体に良くない説はねつ造」は本当か
「健康な暮らしを提供する」という企業理念に基づいた決断で世論は概ね好意的に受け取っているが、ネットやSNSでは一部、以下のようにかみ付いている人たちもいる。
「ここまでタバコ排斥が進んでしまうのはちょっと不寛容すぎないか」
「異なる価値観を徹底的に排除しようという社会だから今の日本は衰退しているのではないか」
そういう人たちがよく唱えているのが、陰謀論だ。たばこ排斥の根拠となっている「タバコ=健康に悪い」という常識とは、実は医療をビジネスとして考えている人々が、もうけるためにねつ造した「うそ」だというのだ。
最近もあるTwitterユーザーが、喫煙率と肺がんのグラフを並べて、「喫煙率は減少しているのに、なぜかがんの罹患率(10万人当たりの診断された数)は上昇している」「煙草が原因ではないとはっきり理解出来ますね ここにも嘘を見つけた」と投稿した。一部の人々から「その通り」と賛同されるだけではなく、「むしろ喫煙していた方が健康になることが証明された」と主張するようなTwitterユーザーまで登場している。
ただ、この手の話は皆さんも一度や二度聞いたことがあるのではないか。筆者も取材で高名な大学教授や専門家や経営者などから話を伺う機会が多くあるのだが、その中にはこんなことを言っている人も少なくない。
「あれ?知らないんですか?たばこを吸うとがんになるというのは真っ赤なうそで、外資系の製薬会社やがん保険の会社がもうけるためにうそをついているんですよ。喫煙率が減っても肺がんで亡くなる人が増えているのがその証拠ですよ」
テレビや新聞では決して報じられないが、情報リテラシーのある人間からすれば、「常識」とでもいわんばかりのもの言いなのだ。では、かねてからネットやSNSでも、まことしやかに語られているこの「陰謀論」は本当なのか。
●陰謀論を主張する人たちに欠けている大事な視点
「結論から先に言ってしまうと、典型的なフェイク情報です。統計データについて誤った解釈をして、都合の良い結果を主張していると言わざるを得ません」
そう断言するのは、国立がん研究センターがん対策研究所事業統括の若尾文彦医師である。
ご存じのように、巷には「◯◯を食べればがんが治る」など出所不明の怪しい情報があふれている。そこで、国立がん研究センターとして、がん患者やその家族だけではなく、社会が誤った情報に惑わさないよう、信頼できるエビデンスに基づいた情報の提供にも務めている。そんな「がん情報」の専門家である若尾医師によれば、先ほどのように、右肩下がりの喫煙率と、右肩上がりの肺がん死亡者数の統計を重ねて、「X」のようになっていることから、たばことがんには何の因果関係もないと主張している人たちには、ある大事な視点が欠けているという。
「それは、がんというのは“高齢者の病気”という視点です。年齢別の罹患率を見ると年齢が上がっていくほどがんに罹患する人が増えています。特に男性は50代以降から罹患率が上がっていきます。日本は急速に高齢化が進んでいて、人口ピラミッドでも最も人口が多い世代もどんどん高齢化しています。つまり、がんの罹患者数が右肩上りで増え続けているのは、日本で、がんにかかりやすい高齢者の数が右肩上がりで増えているからなのです」(若尾医師)
確かに日本はかつてに比べて、高齢者の数が増えてきている。だから当然、昔よりも、肺がんをはじめとしてがんに罹患する人の数も増えており、肺がんで亡くなる人も増えている。
その当たり前の現象に対して、喫煙率の統計を重ねて、「ほら、見ろ! たばこを吸わなくてなっても、こんなに肺がんで死ぬ人が多いじゃないか!」というのは、かなり苦しいロジックだ。
●年齢の影響を補正してがんのデータを見ると分かること
ただ、その一方で「そんなことを言い出したら、喫煙率とがんの関係など何もわからないじゃないか」とモヤモヤする人も多いだろう。確かに、人口構成は年を重ねていくほどに変化をしていくので、がんの罹患率や死亡率の変化を、正確に過去と比較することができない。
「そこで『年齢調整罹患率・死亡率』という年齢の影響を補正する方法があります。これは、もしその人口構成が、基準人口と同じだったら実現されたであろう罹患率や死亡率を計算する方法です。国際比較の場合は世界人口に合わせますが、日本では最近までは昭和60年時、今後は平成27年時の人口ピラミッドに合わせることが定められています」(若尾医師)
※長文のため全文は引用先で
続きを読む
Source: 地下帝国-AKB48まとめ