6/28(土) 8:17配信
プレジデントオンライン
■「素晴らしい」と思ってほったらかしていたら…
「お茶当番」って今もあるんですよね。当時、私もずっとやっていたんですが、それを見て小2の男の子が「おかしい」というんです。
「だってコーチは男の人だけど、大人じゃない。お茶ぐらい自分で入れられるでしょ? フランスだったらそうだよ。なんで大人の男の人に女の人がお茶をついでいるの?」
フランス社会が子供をそうやって育てて男女平等に慣れさせているわけですね。人権教育がすでに施されていたということです。
それを聞いて、私は安心してしまったわけです。
「ああ、この子は8歳ですでにこの感覚がある。素晴らしい」
フランスの教育を絶賛してしまった私は、そこから人権教育、人としての人格教育の面では息子をほったらかしにしてしまいました。しかし、その後が大変だった。
仕事に追われながらも高校生まで育てたとき、ふと気がついたらそこにはものすごくマッチョで男尊女卑な男になった息子がいました。
日本のアイドルが大好きでアニメが大好き。胸だけ大きい童顔の女の子が大好き。「女の子は可愛いほうがいいよね」「やっぱり逆らわない子がいいよね」「口答えしない子がいいよね」と普通に言う子になってしまいました。
■息子でさえ私は手に負えなかった
一方で、フランスで育ってきた上の娘が16歳ぐらいのとき日本にやってくると、真逆の反応でした。「日本のテレビは見てられない。男尊女卑でひどい番組ばっかり。吐き気がする!」とか、「CMを見ていてもお母さんがエプロンしている姿ばっかりじゃない」と言って、すごく怒るんです。フランスではそういう感覚が身につく平等教育が徹底されていますから。
日本に来た娘と一緒に、息子に対して「日本のアイドルの『営業』はおかしい。お金取ってサインや握手するって、要は売春につながる考え方でしょ?」と話したんです。息子のほうは「どうして?」と理解しない。「可愛いからいいじゃない。なんで可愛いものを可愛いと言って悪いんだ」と開き直ってしまい、まったく聞く耳を持たない。
私の息子なのにこうなったということは、遺伝は関係ない。社会が人を作るんだ、ここで作られてしまったんだ。息子でさえ私は手に負えなかった、このままでは人権を理解しない人格に育ってしまう、と思いました。
そこで、高校2年生のときに彼をフランスに送り返しました。フランス語は相当忘れていたので苦労して勉強してぎりぎりバカロレア(日本の高卒認定に相当する=編集部註)に受かりましたが、それからはずっとフランスに住んでいて、当人も今では日本社会が男尊女卑であることを理解できる人間に変わりました。再度ちゃんと教育され、人権を理解する人になりました。間に合って本当によかったと思います。
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Source: SKEまとめもん